話は変わりますが、パキスタン(というかイスラム圏全般かも?)には面白い習慣があります。パキスタンは広い国(日本の約2倍)ですが、僕の行先は決まって“北部地方(Northern Area)”です。なぜかと言うと世界第2位の高峰K2(別称:ゴッドウィンオースチン山、中国名チョゴリ)や、“魔の山ナンガパルバット”などカラコルム山脈の山々があるし、インダス川源流部の大峡谷、中国国境クンジェラーブ峠、不老長寿のフンザ王国、人種のルツボとも言われるギルギットの町など、その魅力は尽きないからです。そのギルギットという北部地方の中心とも言える街に数日間滞在したことがあります。一人旅だったし、チャンスがあればトレッキングみたいな山歩きをしようと思っていたので、小さなテントや最低限のキャンプ道具を担いでいました。ギルギットには多くの宿泊施設がありましたが、せっかくテントがあるのだから、町でもテントに泊まろうと考えた。しかし、そのへんのオジサンが普通に鉄砲を抱えて歩いているような町だし、時々宗教派閥抗争でドンパチがあって人が死ぬような土地だから、その辺の空き地にテントを張るのは危険だし無謀だと思った。そこで、ある広い中庭を持つ安そうなホテルに頼んで、中庭にテントを張らせてもらったのです。宿の主人に「中庭にキャンプさせて下さい。」と言うと、二つ返事でOK。さすがに無料はないので、幾らかと聞いたら(確か)20ルピーと言われた。当時で80円くらいでしょうか?
ギルギットはメインストリートがびろ~んと長く、その両脇にお店やレストランやホテルなどが連なっています。その中の一件のレストランに通うようになって、そこの髭を蓄えた精悍な顔つきのご主人と少し親しくなったのです。パキスタン人の男性はたいてい髭を生やしています。彼は、歌手の松崎しげるに少し似ていて、体格が良く切符の良い感じの男でした。ある日、彼に誘われて、ギルギットの映画館に行きました。面白い映画をやっているから観に行かないか?と誘われたのです。